色合いを白とネイビーとシルバーに抑えたスタイリッシュで都会的な空間は、一切の無駄や乱れがなく、まるで美術館のように完璧なバランスで成り立っています。極限まで削ぎ落とされた美しさの裏には、職人達の 揺るぎない技術があります。例えば、タイル貼りのリビングと芝生の庭の間を隔てる3枚のガラス戸。断熱性を考えてペアガラスを採用し、枠の部分には既製のサッシは使わず、木を特注サイズでカットし、白く塗装しています。壁は左官職人の手で塗られ、オーディオや照明、スイッチなど生活感の欠片はすべて壁や天井に埋め込まれています。
外からリビングを見ると、ここにも計算された美しさが存在します。ところでリビングの横幅は実に7〜8mもあるのに、部屋に柱がないことにお気づきでしょうか。まるでコンクリート造りの家にみえますが、実は木造だけで建てられています。このような大空間を木造だけで建てるとすると、すべての木材や建具を特注にし、寸分の狂いもなく施工しなくてはなりません。曖昧、中途半端という言葉が似合わない緻密に計算し尽くされた空間。シンプルな空間ほど形にするのは難しい。